独立系ソフトウェア開発企業での役員として携わった組織改革の事例をご紹介します。システムエンジニアが主体の企業で発生していた若手離職の課題に対し、具体的な施策を展開することで、組織の活性化と人材定着を実現した取り組みです。
1. 組織の現状と課題

企業概要
社員数160名程度の独立系ソフトウェア開発企業。社員の大半がシステムエンジニアとして、顧客企業の開発プロジェクトに参画する形態で業務を行っています。プロジェクト終了後は別の顧客先へ異動する特徴があり、この業務形態が組織特有の課題を生み出していました。
表面化していた問題点
最も深刻だったのは若年層の高い離職率です。特に技術力を身につけ、一人前として活躍できる段階に達した優秀な若手社員の退職が目立っていました。また、ベテラン層の生産性低下に対する若手からの不満や、会社とのコミュニケーション不足への不満も顕在化していました。
危機的な状況
若手・中堅層でメンタルヘルス不調による休業や退職が増加。この状況は、企業の持続的成長を脅かす重大な経営課題となっていました。
2. 問題解決へのアプローチ

現状分析の実施
若手・中堅層のメンタルヘルス不調が深刻な問題となっていました。特に入社3~5年目の中核人材層で、突然の休職や退職が相次ぐ状況でした。この問題は単なる人員の欠員という表面的な課題だけでなく、以下のような複合的な経営リスクをもたらしていました。
まず、プロジェクト運営への直接的な影響です。突然の休職や退職は、進行中のプロジェクトの工程遅延や品質低下を引き起こし、顧客との信頼関係にも影響を及ぼしていました。さらに、残されたチームメンバーへの業務負荷増大により、新たなメンタルヘルス不調者を生む負のスパイラルに陥るリスクも高まっていました。
また、人材育成の観点からも深刻な問題でした。技術力と経験を蓄積した若手・中堅層の離脱は、次世代のリーダー候補の喪失を意味し、組織の技術継承や将来の幹部人材の育成に大きな支障をきたしていました。
採用・育成にかけたコストの損失に加え、新規採用での人材補充も困難を極め、「優秀な人材が定着しない会社」という評判が広まることで、採用市場での競争力低下も懸念される状況でした。
このような状況は、企業の持続的成長を脅かす重大な経営課題となっており、早急な対策が求められていました。特に、IT業界特有の高ストレス環境下での労務管理や、リモートワークの増加に伴うコミュニケーション課題など、新たな時代における働き方への適応も求められる中、抜本的な組織改革の必要性が明確になっていました。
コミュニケーション改善施策
社員の声を直接聴く仕組みとして、面談とEメールによる相談窓口を設置。さらに、入社年次別の定期面談を導入し、若手からベテランまで幅広い層の意見収集を可能にしました。管理者層には法令知識や1on1ミーティングスキルの研修を実施し、マネジメント能力の向上を図りました。
処遇・福利厚生の刷新
・賃金体系の透明化
・職位・職責ごとの給与レンジを明確化
・昇給・昇格の条件と必要スキルの明示
・各種手当や賞与の算定基準の公開
・モデルケースによる将来の年収シミュレーションの提示
この透明化により、「なぜ自分はこの給与なのか」「今後どのように給与が上がっていくのか」という社員の素朴な疑問に答え、キャリアプランを具体的にイメージできる環境を整備しました。
3. 健康管理体制の構築

メンタルヘルスケアの強化
定期的なストレスチェックの分析を実施し、その結果を基に管理者層へのメンタルヘルスケア講習を展開。職場環境の改善に向けた具体的な施策を実施しました。
産業医との連携
産業医との連携を強化し、社員の心身の健康管理体制を大幅に拡充しました。具体的には、毎月第2・第4水曜日を産業医面談日として設定し、定期的な健康相談の機会を確保。さらに、コロナ禍以降の働き方の変化に対応するため、オンライン面談の枠を新たに設けました。これにより、在宅勤務中の社員でも気軽に産業医に相談できる環境が整いました。
また、長時間労働による健康障害を未然に防ぐため、月間の残業時間が45時間を超えた社員に対しては、産業医との面談を必須としています。面談では、睡眠の質や疲労度の確認、業務負荷の適正化に向けた助言など、きめ細かなケアを行っています。
さらに、年2回実施しているストレスチェックの結果を活用し、高ストレス者として判定された社員には、優先的に産業医面談の機会を設けています。この予防的なアプローチにより、メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応が可能となり、重症化を防ぐ効果を上げています。産業医からの専門的な助言は、職場環境の改善や業務配分の見直しにも活かされ、組織全体の健康管理体制の向上にもつながっています。
結果として、従業員の生産性も向上しました
本事例では、若手人材の離職という課題に対し、コミュニケーション改善、処遇制度の見直し、健康管理体制の構築という三つの柱で取り組みました。特に重要だったのは、現場の声を丁寧に拾い上げ、具体的な施策に反映させたことです。これらの取り組みは、単なる離職対策にとどまらず、組織全体の活性化と持続的な成長基盤の構築につながりました。
今後のIT企業における人材マネジメントにおいて、本事例で実施した「コミュニケーションの強化」「透明性の高い処遇制度」「健康管理体制の充実」という三位一体の取り組みは、重要な示唆を与えるものといえるでしょう。
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