「社員は私ひとり。だから私の健康診断代は、当然会社の経費ですよね?」
私たちのもとに相談に来られる一人社長(マイクロ法人代表)の方から、この質問を受けたとき、税務調査官は心の中で「しめしめ」と笑っているかもしれません。
なぜなら、一人社長が受ける高額な人間ドック費用は、税務調査において最も「個人的な支出(=役員賞与)」と認定されやすい地雷だからです。
しかし、ここで「じゃあ、経費にならないなら自腹で払います」「高いから受けるのをやめます」と引き下がるのは、経営者としての思考停止に他なりません。
あなたの会社において、あなたは代わりの効かない唯一のエンジンであり、サーバーであり、頭脳です。
そのメンテナンス費用を会社が負担しないなど、ビジネスの論理として破綻しています。
この記事では、マイクロ法人などの一人社長であるあなたが、健康診断を経費にできるのかどうか?という単なる税務マニュアルの解説ではなく、以下の点を徹底的に深掘りします。
- 税務署が仕掛ける「一人社長=私的流用」というレッテルをどう回避するか
- 「福利厚生」という聖域を、たった一人の会社で成立させるためのギリギリのロジック
- 役員賞与認定(往復ビンタ)のリスクを最小限に抑える実務テクニック
あなたの身体は、法人の「全財産」です。税務署の顔色を伺うあまり、最大の資産を失わないための戦略を解説します。
罠を知る|なぜ「一人社長の人間ドック」は税務署の格好の餌食なのか

まずは残酷な現実にも目を向けてみましょう。
従業員がいる通常の会社なら当たり前に認められる「福利厚生費」が、一人社長になった途端、なぜこれほどまでに否認のリスクに晒されるのでしょうか。
それは税務署が、あなたの会社を「法人という衣を被った個人財布」だと疑っているからです。
ここを理解せずに安易に領収書を切ることは、数年後にやってくる追徴課税への招待状を自ら送るのと同じ行為です。
「福利厚生」の定義における“一人”の弱点
税務上、「福利厚生費」として認められるための大原則は「全従業員に対して機会が公平であること」です。
従業員が複数名いれば、「全員一律に受診させる」ことで公平性を担保できます。
しかし、対象者が「社長一人」の場合、比較対象がいません。
税務調査官はこう指摘します。
「これ、会社のためじゃなくて、社長が個人的に安心したいから受けただけですよね? だったら個人のお金(給与)から払ってください」
この「自分へのご褒美を経費にしただけでしょう?」という指摘に対し、客観的かつ論理的な反論を用意しなければ、経費計上は認められません。これが一人社長の抱える構造的な弱点です。
否認された時の代償は「経費NG」だけではない
もし税務調査で健康診断費用が否認された場合、単に「経費が取り消される(損金不算入)」だけでは済みません。
その費用は、会社から社長への「役員賞与」とみなされます。
これが何を意味するか、ご存知でしょうか? 待っているのは、恐怖の「往復ビンタ」と呼ばれるペナルティです。
1.法人税が増える
経費として認められないため、その分利益が増えたとみなされ、法人税が追徴されます(損金不算入)。
2.社長の所得税・住民税が増える
「会社が肩代わりした健診費用=社長へのボーナス」と認定されるため、個人の所得が増えたことになり、所得税・住民税が課税されます。さらに、源泉所得税の徴収漏れに対する不納付加算税も発生します
たかだか数万〜数十万円の健診費用に対し、この二重課税はあまりに痛手です。
このリスクを知らずに「バレないだろう」と処理するのは極めて危険です。
安易な「社内規定」だけでは守れない
ネット上には「『健康管理規定』を作成すれば、一人社長でも人間ドックを経費にできる」という情報が溢れています。
確かに、社内規定(ルール)の作成は必須条件です。しかし、「規定があれば鉄壁」ではありません。
実態が伴わない規定、あるいはネットからコピペしただけの形骸化した規定は、百戦錬磨の税務調査官の前では紙切れ同然 です。
「規定にはこうありますが、実態はお一人ですよね? 恣意的ですよね?」と詰められたとき、あなたはどう答えますか?
一人社長が突破すべきは、形式的な書類作成ではなく、「事業遂行上の不可欠性」の証明なのです。
反撃の論理|たった一人でも「会社の経費」と言い切るための武装

では、一人社長は泣き寝入りして自腹を切るしかないのでしょうか? 答えはNOです。
論理を積み上げ、証拠を残せば、正当な経費として認めさせる(あるいは否認のリスクを極限まで下げる)ルートは存在します。
ここでは、税務署と戦うためのロジックと実務を紹介します。
「労働安全衛生法」を逆手に取る
まず最強の盾となるのが、労働安全衛生法です。
この法律は、事業主に対して「常時使用する労働者に対し、医師による健康診断を実施しなければならない(第66条)」と義務付けています。本来、役員は労働者ではありませんが、中小企業においては実質的に労働者性を帯びているケースがほとんどです。
「会社は法律(労働安全衛生法)を守る義務がある。
社長も業務に従事しており、会社として健康管理義務を遂行するために費用を出したのだ」
この主張は強力です。
ただし、これはあくまで「一般的な定期健診(安価なもの)」には有効ですが、高額な人間ドックやオプション検査(脳ドック、PET検査など)の正当化には少し弱くなります。そこで、次の手が重要になります。
「定期同額給与」の枠組みを活用する裏技
もし、どうしても高額なドック費用を経費計上したいが、否認リスクが怖いという場合、発想を転換する方法があります。
それは、「最初からその費用を見込んで役員報酬を設定する」という方法です。
例えば、ドック費用が年間20万円かかるなら、月額報酬を約1.7万円上げておき、個人で支払う。これなら税務リスクはゼロです。
しかし社会保険料も上がってしまい、これはある意味「敗北」です。
目指すべきは、
「予防医療=役員の職務執行能力の維持コスト」として、
法人の予備費(福利厚生費や消耗品費ではなく、衛生費などの科目)で賄うスキームの構築です。
「私が倒れたら会社の売上がゼロになる。だから、これは機械のメンテナンスと同じ『事業維持コスト』である」
このロジックを補強するために、後述する議事録などが重要になります。
家族役員がいる場合の「社内格差」をなくす
もし、配偶者や親族が役員として登記されているなら、大きなチャンスです。
「社長だけ高額ドック、配偶者は無し」 これでは恣意性(好き勝手やっている感)が出てしまい、否認リスクが高まります。
逆に、「役員全員(社長と配偶者)が、同等の医療機関で、同等の検診を受ける」という実績を作るのことが有効です。
これにより、「特定個人の優遇(=賞与)」ではなく、「役員に対する一律のルール(=福利厚生)」という外形標準を整えることができます。人数は少なくても、「全員一律」という要件を満たすことが重要です。
本質的決断|税務リスクを超えて「最強のエンジン」を磨け

ここまで税務上のテクニックをお話ししましたが、ここからは経営の本質の話をします。
「経費で落ちるか落ちないか」を気にして、検診のグレードを下げたり、受診そのものをやめてしまう一人社長が多すぎます。
それは、F1レーサーが「経費削減だ」と言ってガソリン代をケチるようなものです。レースに負けるどころか、事故を起こして終わります。
代替不可能性(Irreplaceability)のコスト
大企業の社長なら、入院しても副社長や執行役員が組織を回します。 しかし、あなたは違います。
あなたが倒れれば、即座に売上はゼロになり、取引先への支払いが止まり、信用が失墜します。
一人社長にとっての健康診断は、個人の健康チェックではありません。BCP(事業継続計画)そのものです。
そのリスクヘッジ費用を「高い」と感じるなら、事業のリスク管理に対する認識が甘すぎると言わざるを得ません。
数万円の節税よりも、数千万円の売上機会損失を防ぐ方がはるかに重要です。
「自腹でも受ける」が正解、経費なら「ラッキー」
もしも今、「経費になるなら受ける」と考えているのであれば、経営判断の基準を変えてください。。
まずは、自分に必要なスペックの検診(脳ドック、心臓ドック、がん検診など)を予約してください。
その上で、顧問税理士と相談し、「どうすればこれを経費として説明できるか」を考えましょう。
税理士と戦ってでも、あなたの健康への投資は確保すべきであり、必要不可欠なものでもあるのです。
健康診断結果を「株主総会議事録」に残す意味
一人社長であっても、検診結果が出た後に必ずやってほしいことがあります。 それは、
「株主総会議事録(または取締役決定書)」に健康診断の結果を記載することです。
「第○号議案:役員の重任について」
「代表取締役○○の健康診断結果に基づき、健康状態に問題がないことを確認したため、次期も経営を続投することを承認した」
このような記載を残してください。
これが、税務調査が入った際に「検診は個人の趣味ではなく、会社の存続(役員の続投可否)を判断するための重要な経営資料であった」という、最強の証拠物件になります。
ここまで準備している一人社長は稀であり、調査官への説得力も段違いです。
Case Study|一人社長たちの「健康投資」決着事例

でも、実際どうなの?という方のために、実際に税務の壁と戦った一人社長たちの事例を紹介します。
Case 1:WebコンサルE氏(40歳)「否認覚悟の人間ドック」
E氏は「否認されたら修正申告すればいい」と割り切り、毎年20万円の人間ドック費用を会社の経費(福利厚生費)として計上していました。 ある年、税務調査が入り、やはり調査官から「これは高額すぎる。個人で負担すべきでは?」と指摘を受けました。
しかしE氏は、先述した「議事録」と「事業における自身の代替不可能性」をプレゼン。
「これが私のサーバーメンテナンス代だ。これがなければ売上は立たない」と主張しました。
結果、全額否認は免れ、一部(標準的な健診費用相当額)を経費として認めさせることに成功しました。
何より、その検診で初期のポリープが見つかり、早期治療できたことで事業を守ることができました。
Case 2:不動産管理F氏(60歳)「少額検診+保険活用」
F氏は税務リスクを極端に嫌うタイプでした。
そこで、高額なドックは自費(個人財布)で支払い、会社では基本的な法定健診(1万円程度)のみを経費化しました。
その代わり、法人で「役員向けの医療保険・生命保険」に加入しました。
これらは契約形態によっては保険料の一定割合を損金算入(経費化)できます。
万が一の入院時には、そこから給付金が出るため、会社の運転資金や自身の休業補償に充てることができます。
「検診代の経費化」には固執せず、別の金融商品を使って「リスクヘッジ費用の経費化」を実現した、実利を取った賢明なパターンです。
「病気の発見」から「未来のパフォーマンス投資」へ

税務署が仕掛ける「一人社長=私的流用」というレッテルをどう回避するか。
そのためには、単なる健康診断を超えた、論理的で客観的な「未来への投資」として、健康管理をする必要があります。
1. 「病気の発見」から「リスク予測」へ。遺伝子検査が示す客観的事実
健康診断が「すでに起こった異常」を探す 過去の診断 だとすれば、これからの健康戦略は「未来に起こるリスク」を科学的に予測する予防医学です。
弊社で提供している医療サービスの中に遺伝子検査やAI解析などの科学的アプローチがありますが、これにより一人ひとりの体質、病気への傾向、最適な食事・運動パターンを客観的なデータとして可視化します。
データに基づいたプログラムによる効果:
「なんとなく健康に良いこと」ではなく、「事業の未来を守るために、今、何をすべきか」という明確なアクションプランを示します。これは、税務リスクを回避する以前に、経営者として最も合理的な「生存戦略」となります。
2. 孤独な自己流を終わらせる。医師とコーチの「伴走型チーム」の必要性
一人社長はすべてを自分で決め、自分で実行しなければなりません。
健康管理も「自己流」で、ジムやサプリメントを試しては挫折し、結局「忙しい」で片付けてしまうことが少なくありません。
行動の継続こそが健康戦略の最大の壁であり、これを乗り越えるために「医師とコーチのチームによる伴走」が非常に有効です。
医師が医学的なエビデンスに基づいた最適なプランを設計し、専属コーチが日々の生活に寄り添ってモチベーションを維持し、行動を修正し続けることによって、孤挫折を防ぎ、最高のコンディションを安定して維持し続けるという、経営判断の土台を確立します。
3. 「全財産」である身体を丸ごと守る。包括的な医療サポートがもたらす安心感
あなたの身体が法人の全財産である以上、そのメンテナンスは最も重要な投資です。
そして、最高のコンディションとは、「自分自身だけでなく、家族の心配がない」という精神的な安心感があって初めて実現します。
弊社の包括的な医療サポート体制は、ご自身の健康だけでなく、配偶者やお子様、ご両親の健康管理や医療連携までをサポート対象としています。
家族の健康問題による目に見えないストレスや時間的な機会損失を解消し、
「家族ごと守られている」という最高の安心感の中で、本業に100%集中できる環境を手に入れることができます。
あなたの身体は、法人の「全財産」です

一人社長の身体は、あなた個人のものではありません。 法人の全財産であり、唯一無二のものです。
税務署の顔色を伺って、身体のメンテナンスを怠ることは、 緩やかな倒産に向かっているのと同じです。
経費で落ちるかどうかのテクニックも大切ですが、まずは「受診する」という経営決断をしてください。
その上で、最大限の防衛策を張り巡らせましょう。
📌 もしあなたが
- 「うちのマイクロ法人の規模・売上で、どこまでを経費としてねじ込めるか知りたい」
- 「税務調査で突っ込まれない『鉄壁の議事録』の書き方を知りたい」
- 「自分に合った『人間ドック+保険』のハイブリッド戦略を組みたい」
とお考えなら、一度弊社の無料診断を受けてみてください。
あなたの会社の“守りのレベル”がわかり、最適な健康投資戦略が見えてくるはずです。





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