経営者は、心に負担が非常にかかる役職です。その重責から、経営者がノイローゼになるケースは珍しくありません。常に会社や社員の未来を考え、その未来に向けて大小関係なく日々決断を迫られます。
しかし、そこには、不安もあることでしょう。この不安が募り、精神に支障をきたす経営者が多いのが実情です。ノイローゼの症状が出始めたら、早めに対処するようにしてください。そこで今回は、ノイローゼの対処法をお伝えします
①経営者に起こりやすい?ノイローゼとは、一体なに?
ノイローゼとは、「神経症」をドイツ語で表したもの。実は現在は「神経症」という言葉は精神医学では使用されなくなっているのですが、ここでは世間的なイメージで使われている「ノイローゼ」についてご説明します。 「ノイローゼ」という言葉から「うつ病」をイメージされる方がいるかもしれませんが、ノイローゼとうつ病は別です。うつ病は、長期間にわたって憂鬱な気分が続いたり、無気力になったりする精神障害。厳密には、精神障害のなかの気分障害と分類されており、日常に支障をきたす場合もあります。一方のノイローゼは、日常に支障をきたすほどの症状はありませんが、ほとんどの場合が、「あるもの」を原因として心身の不調が続く状態を指しています。その「あるもの」とは? この項では、ノイローゼについてお話します。
1-1ノイローゼは、どのような症状が出るのか?
下記のような症状が日常的に出ていたら要注意です。
・イライラする
・集中力がなくなる
・落ち着きがなくなる
・常に不安を感じている
・気分が落ち込みやすい
・疲れやすい
・動悸、頭痛、めまい
・便秘、下痢
・倦怠感
これらはほんの一部であり、人によって症状は十人十色。ただ、共通しているのは「心身の不調」が顕著に出ているということ。「心身の不調」を感じたら、「これはノイローゼなの? 違うの?」と思わずに、対処することを考えてください。特に、経営者は自分のことはさておき、会社や従業員に目を向けてしまうため、自分の心の不調は後回しにしがち。しかし、上記のような症状を見て見ぬふりをしてしまうと、後々大変なことになりかねませんので、早い段階での対処が大事です。
1-2ノイローゼの原因は、なにか?
ノイローゼには、さまざまな種類があります。
・全般性不安障害(不安によって、日常生活に支障が出ている状態が半年以上続いている)
・パニック障害(パニック発作が繰り返し起こったり、その発作を心配したりする)
・広場恐怖(公共交通機関や広い場所に行くことで、不安や恐怖が芽生えてしまい、そのような場所を避ける状態が半年以上続いている)
・社交不安障害(他人の目が気になって不安を感じ、人間関係を避ける)
・特定の恐怖症(特定の対象や状況に恐怖反応を示す)
・強迫性障害(同じ行為や同じ思考を繰り返し、その行為に1日約1時間費やしている)
・病気不安症(病気にかかる、かかっていると思い込み、不安に襲われることが半年以上続いている)など
他にもありますが、今回は「あるもの」に注目してみます。それは一体なんでしょうか。よく見ると、上記の中に共通している言葉を見つけることができると思います。
そう、「不安」です。 日々の中で、苛立ちや悲しみなどのストレスを感じるときがあると思いますが、ノイローゼの原因の多くは「不安」。不安は、考え始めるとなかなか終着点が見つからない感情ですので、それが募るとノイローゼになってしまうのです。
②不安を作り出している原因は、なにか?
前項で、ノイローゼは「不安」が原因になっている場合が多いとお伝えしました。そのため、不安を取り除くことが症状改善の鍵となりますが、これは決して簡単なことではありません。そこで、取り除くためにまずは行ってほしいことをお伝えします。
2-1不安を取り除くための重要ポイント
不安を取り除くためには、重要なことがあります。
それは、「心の声に耳を傾ける」ということ。
心の声に耳を傾けることが、なぜ大事なのでしょうか? 不安を取り除くにあたり、気をつけなければいけないことがあるからです。それは、「『取り除く』という行為が無意味にならないようにする」ということ。
たとえば、頭痛に悩まされているとします。しかし、痛みを和らげようと思って飲んだ薬が胃薬だった場合、一向に頭痛はおさまりません。これではせっかく痛みを取り除こうとしても、無意味に終わってしまいます。 同じように、不安を取り除くための処置も、的確なものでなければ意味がありません。心が「Aという物事に不安になっているよ!」と教えてくれているのに、「Bの物事」を取り除こうとがんばっても無意味なのです。つまり、不安を取り除くためには、原因をしっかりとつきとめる必要があるのです。
2-2不安の原因をつきとめる効果的な方法
特定のものに対して不安を抱いており、それが明確に分かっている場合は良いのですが、漠然としていて「これだ!」という原因が見つけにくい不安の場合はどうしたら良いのでしょうか。特に経営者は、自分のことだけではなく会社や従業員に関する不安などもあるでしょう。
いろいろな不安が入り交じっている心の声を聞くための方法をお教えします。
ずばり、「不安に思っていることを『すべて』書く」です。
「書くことで、原因が見つかるの?」と思いましたか?
これは心理カウンセラー直伝の「不安の取り除き方」。実際にカウンセリングの現場でも使われている方法なのです。頭の中、心の中で考えていることを「文字」にすると、客観的に見ることができるのでオススメしているのです。
最初は漠然としているかもしれません。でも、文字にしてください。
箇条書きでなくても良いのです。ノートに殴り書きするような感じでも良いのです。
たとえば、「従業員」「コミュニケーション不足」「仕事のパフォーマンス」「仕事へのモチベーション」「やりがい」「福利厚生」。
そうすると、不安の原因が見えてきませんか? 例の場合、「従業員が心地よく働けているか?」ということに不安を抱いているのだと分かります。このように、書き出した言葉から原因をつきとめることができるので、ぜひやってみてください。
③不安の原因を取り除く
不安の原因を取り除く際にも、気をつけてほしいことがあります。それは、不安を「自分の手で取り除く」だけが正解ではないということ。経営者は、自分でさまざまなことを決定していますし、周りになかなか弱い部分を見せられないので「自分でどうにかしよう」と思いがち。しかし、そんなことはありません。「自分」以外の人に頼る方法もあるのだと、覚えておいてください。
3-1不安を反転してみる
たとえば、下記のような不安があったとします。
▷経営者のよくある悩み
・月間の売り上げ目標に達成するだろうか
・従業員は会社に対してどんな思いを持っているのだろうか
・世間の評価はどのような感じだろうか
▷これらを反転させると、どうなるでしょうか?
・目標を達成させるための対策を考えよう
・従業員と定期的に面談しよう
・SNSを活用してアンケートを取ってみよう
このように「~だろうか?」という不安が「~しよう」と、前に進む一歩になっているのがお分かりいただけるのではないでしょうか。つまり、不安が「前向きな一歩」のきっかけになるのです。
不安があるからこそ改善策が見つかり、より良い方向にいくのです。不安はネガティブなものだとイメージしてしまいがちですが、ポジティブなものに変わる力を潜在的に持っているので、不安の「反転」を試してみてください。
3-2自分の手から離しても良さそうな不安を見つける
人員不足の作業現場に機械を導入するように、「心」も、自分だけでどうにかしようとしなくて良いのです。心に余裕が無い場合は「不安を手放す」「誰かに頼る」という選択も視野に入れてください。
たとえば、社内のコミュニケーション不足に不安があるようでしたら、部下に頼るのも良いでしょう。信頼できる直属の部下に、解決策を考えてもらったり、それを実行してもらったり。また、専門分野の知識が必要となる不安でしたら、思いきって社外の人に依頼するのも良いでしょう。
資金繰りの不安であればファイナンシャル・プランナーに相談し、マーケティングに関する不安であればマーケターに相談するのも手。そのための専門家なのです。専門家に依頼することで、不安の軽減、悩む時間の削減ができるのです。
守るべきは会社? 従業員? それとも自分の心?
経営者の心は、「会社」「従業員」「顧客やユーザー」「世間からの評価」などがほとんどの部分を占めていることと思います。それは当然です。会社の経営戦略に悩み、従業員が離職しないような環境作りに気を配り、顧客やユーザーのニーズに応え続け、世間からの評価を落とさないように努める……。会社のトップに立つ人ですから、考える事柄はたくさんあります。
では、「自分」のことは、いつ考えるのでしょうか?
環境によっては、「自分」のことを考えている場合ではない経営者もいるかもしれません。そのため、私どもは「まずは経営者本人の心を優先してください」とは無責任に言えません。しかし、心が潰れてしまったら元に戻すには大変な時間がかかりますから、早めに対処してほしいというのが本音です。
bizサポートには現役の経営者や元経営者が在籍していますので、経営に関すること、従業員のこと、今後の戦略の立て方などでお力になることができます。経験豊富な経営者ばかりですので、的確なアドバイス、しっかりとしたサポートができる点が強み。
さらに、心理カウンセラーも在籍しているので、不安を取り除くお手伝いができます。経営者のノイローゼの症状を軽減するための「人」「ノウハウ」が揃っているので、いつでもお声がけください。