クリニックで職員ヒアリングを行うときは、「何を聞くか」と同じくらい「誰が読み、何に使うか」を先に決めてください。話を集めても、その後の扱いが分からなければ、次の面談で意見を出しにくくなります。最初の目的は、退職の意思や問題のある人物を探すことではなく、働く上でどの仕事・仕組みに困難があるかを確かめることです。
面談の目的・担当・共有範囲を説明する
勤務環境の改善のための面談と、本人の業績を評価する面談は区別します。どちらも必要な場合でも、目的を明示せず一つの面談で済ませないようにします。面談担当者自身が相談の対象になる可能性があるときは、別の担当・窓口も用意してください。
事前説明には、対象の期間、予定時間、メモの保管者、報告を見る人、回答しにくい質問の扱いを入れます。少人数の職場では、職種・勤務日・出来事だけでも本人が推測されるため、「完全匿名で必ず守れる」と約束しないことが大切です。
説明例は「仕事で困る場面と改善案を聞きます。記録は担当者と院長が業務改善のために扱います。全体への報告は個人が分かる記述を減らしますが、安全確保や事実確認が必要な場合は、共有範囲を相談します」です。実際に守れる運用に合わせて直してください。
質問は、印象から具体的な場面へ進める
「不満はありますか」だけで終えず、直近の仕事を振り返ります。誰が悪いかを誘導する質問を避け、起きたこと、仕事への影響、本人が望む支援を分けて聞いてください。本人が見聞きした事実と、他の人から聞いた話も区別します。
| 確認したいこと | 質問例 |
|---|---|
| 業務の負担 | 直近の勤務で、時間内に終わりにくかった仕事は何ですか |
| 指示・役割 | 判断に迷ったとき、誰に確認するか分からなかった場面はありますか |
| 連携 | 引き継ぎで足りなかった情報は何ですか |
| 支援 | 手順や担当が変われば取り組みやすくなることはありますか |
| 改善の優先 | 最初に一つ変えるなら、どの仕事を選びますか |
| 確認 | 今日の話で、記録や共有の仕方を相談したい内容はありますか |
これは自作の質問例です。全項目に回答させるための調査票ではありません。家庭や病歴など、業務改善に不要な情報を深掘りせず、健康やハラスメントの相談があった場合は、適切な担当・専門窓口につなぎます。
記録は、本人の発言・確認できた事実・推測を分ける
「人間関係が悪い」という要約だけでは、何を改善するか決まりません。たとえば「閉院前の確認作業が同じ人に集まるとの話」「担当表は未確認」「勤務記録と照合する」のように、確認済みかどうかを明示します。発言の意図を管理者が補って断定しないでください。
記録に個人情報を含める場合は、アクセスを必要な担当に限ります。全員が閲覧できる共有フォルダや、関係者の多いチャットへ面談メモをそのまま貼る運用は避け、保管場所と見直し・削除の時期も決めておきます。
報告書は「意見の一覧」から「確認と改善の表」へ
全体報告では、職員の発言を順番に並べるより、仕事の課題ごとに整理します。少人数の部署で「受付の一人が話した」と書けば匿名性が失われます。必要のない職種・日時・言い回しを減らし、当事者への事実確認と、全体へ伝える改善策を分けてください。
| 課題のまとめ方 | 追加確認 | 改善案 | 担当・振り返り |
|---|---|---|---|
| 閉院前の確認が偏るとの意見 | 担当表と実際の作業を確認 | 分担表と不在時の代替担当を試す | 現場責任者が次の勤務週を確認 |
| 予約変更の連絡先が不明 | 迷った場面と現在の手順を確認 | 例外の連絡先を一つの表へ | 院長が承認後、職員へ共有 |
この表は架空の記入例であり、実在の医院の結果ではありません。意見の人数だけで優先順位を決めず、安全への影響、期限、困っている程度、実行可能性を確認します。
面談後は、決めたことと決められないことを伝える
すぐに直せること、追加確認が必要なこと、現時点で実施できないことを整理し、いつ次に知らせるかを伝えます。全ての要望を採用する必要はありませんが、「検討中」のまま終わると、意見を出した意味が分からなくなります。
実施後の確認では「不満がなくなったか」だけでなく、対象の作業の負担や引き継ぎがどう変わったかを聞きます。勤務記録と本人の受け止めが異なる場合も、どちらかを切り捨てず次に確認する点を残してください。
ヒアリングで見つかった課題に応じて、次の対応を選ぶ
役割や評価が曖昧ならスタッフ評価制度の役割表と項目例、入職直後の支援が足りないなら新人教育の確認表を使い、聞いた内容を仕組みの変更につなげます。退職が続く状況全体は、定着改善の進め方で整理できます。
職員の意見を、役割分担・評価・採用基準の見直しに結びつけたい方は、クリニックの採用・労務・スタッフ問題対策をご覧ください。相談・見積を経て契約内容を確認する流れです。









