未曾有の状況により、自粛による行動の制限、感染への不安、働き方が大きく変化したことによるストレスなど、原因はさまざま。
このように、「うつ」は、いつ、どのような事柄がきっかけでなるか分からない心の病です。
特に経営者は、社内の問題のみならず、社会情勢をはじめとする社外の変化が経営に大きく影響するなかに身を置いていますから、ストレスは並大抵のものではありません。このページをご覧になっているということは、「『うつ』かもしれない」と思う何かがあったのではないでしょうか。
今回は、セルフチェックや、「うつ」の定義、「うつ」から抜け出すための方法をお伝えしますので、一緒に見ていきましょう。
少しでも「うつ」の症状を和らげるお手伝いができたら幸いです。
①「うつ」になると、どんな症状が出るのか?
個人差はありますが、「うつ」の症状を「精神的なこと」と「身体的なこと」の2つの面から紹介します。
セルフチェックをしてみましょう
「最近、無気力が続くなぁ。もしかしたら『うつ』かもしれない」などと思ったら、他の症状も出ていないかセルフチェックをしてください。
■精神的なこと
・何があったわけでもないが気分が落ち込む
・何かをする気になれない
・ぼんやりしてばかりいる
・何かに興味、関心を持てない
・口数が少なくなる
・色々な物事がつらく悲しいことと思える
・不安、焦り、イライラ感がある
・喜び、楽しみが感じられない
・集中できない、仕事でミスが増える
・外見や服装を気にしなくなる
・お酒を飲む量が増える
■身体的なこと
・頭痛、肩こり、腰痛
・耳鳴り、めまい、動悸
・食べられない(食欲不振)、もしくは食べすぎる(過食)
・腹痛、胃の不快感、下痢、便秘
・食べ物の味が違って感じる(味覚障害)
当てはまるものが多かった経営者の皆さん、ここで1つ、注意点があります。それは、これらの症状の多くが当てはまっても、「うつ」ではない可能性があるということ。実は、「うつ」との結論に至るには、1つのキーワードが関係しているのです。
そのキーワードは、次の項目でお話します。
キーワードは、「2週間」
タイトルにある通り、「うつ」だと判断する基準は、先に述べたような症状が「2週間続いているか? いないか?」にあります。
人間誰しも、気持ちの浮き沈みがあります。
楽しいと思っていた次の瞬間につらいことがあり、気分がどん底まで落ちてしまう。無気力になり、働く気力を失ってしまう。
誰でも、このような気持ちになるときがあります。
しかし、これらの症状の心当たりがたくさんあっても、「うつかも!?」と、すぐに「うつ」と結びつけないでください。
大事なのは、2週間続いているか、いないか。
長期にわたって、先程のチェック項目の症状が続くようでしたら、「うつ」を疑ってください。
ただし、2週間続いていなくても、当てはまる項目が多ければ「うつ状態」かもしれません。「うつ状態」は一時的なもので、「日常生活に支障を来さない程度の気分の落ち込み」の状態を指します。「うつ」まではいっていなくても、気になる人は一度病院に行くのも良いでしょう。
実は、身体に何かしらの病を抱えていると、それが原因となって気分が落ち込みやすくなっている場合も考えられるからです。
「最近、情緒不安定だな」と思い始めたら、専門家に話を聞きにいってほしいと思います。
②「うつ」になりやすいタイプとは?
誰しも、「うつ」になる可能性がありますが、そのなかでも特になりやすいと言われているタイプをご紹介します。
①責任感が強い
②完璧主義で手を抜くことができない
③人に助けを求めたり、甘えたりするのが苦手
このような方々はなぜ「うつ」になりやすいのでしょうか。その点をお伝えしながら、「うつ」にならないようにするためのポイントをご紹介します。
過度な責任感、完璧主義は自分を苦しめる
「責任感」は、経営者として、持っていなければいけない感情の1つ。会社の未来がどうなっても構わない、社員にはある程度の給料を出しておけば良い……こんな投げやりな気持ちで会社のトップに立つ経営者はいません。トップに立つ以上、会社の未来や社員の生活を守ろうとする責任感があるはずです。
また、「完璧主義」も、あってしかるべき性格です。たとえば、商品のパッケージデザインを細部にまでこだわって完璧な完成度にすることは素晴らしいこと。
しかし、これらの気持ちは、強ければ強いほど、「うつ」になる可能性を秘めています。
・今、売り上げが伸び悩んでいるのは自分の采配が的確ではないからだ
・従業員の給料をアップできないのは、自分の資金繰りが下手だからだ
・従業員がモチベーションを維持できないのは、自分の動機づけがうまくいかないからだ
こんな風に、自分を責めすぎていませんか。
責任を感じるのは素晴らしいことですが、自分を責めるだけでは何も解決しません。責め続けるのではなく、対応策を考えなければいけないのです。
・売り上げをアップさせる方法を検討する
・収入に対する支出を見直す
・人材育成に力を注ぐ
責任を強く感じるということは、そこに問題があるわけですから、その問題に対処するよう気持ちを切り替えれば良いのです。
「責任を感じている=対処すべきこと」と気持ちを切り替え、「どのように対処したら良いのだろうか」と考えてみてください。そうすれば、過度に自分を追い込むことはなくなると思います。
どうしてもノイローゼのような気持ちになってしまう時は、下記の記事がおすすめです。
人に助けを求めても大丈夫です
苦しい状況下にいる場合、誰かに助けを求めることは恥ではありません。しかし、もしかしたら経営者の方々のなかには「会社のトップの人間が、誰かに助けを求めるなんて恥ずかしい」と思う方がいるかもしれません。
でも、これでは、苦しさからいつまで経っても逃れられません。「1人で物事の対処をするべき」「1人で何とかしなければいけない」と思えば思うほど、自分を追い込むことになります。
その結果、誰にも相談できないがゆえに「孤独」を感じてしまい、「うつ」になってしまうのです。
「うつ」になって、さまざまな判断ができなくなって会社をピンチに追い込む前に、たとえ恥ずかしい思いをしても、誰かに助けを求めて現状の打開策を見つけませんか?
頼る相手は誰でも良いのです。部下はもちろん、家族、知人に話を聞いてもらうだけで「孤独」を感じることはなくなります。
もし、身近な人に弱い部分を見せられないようでしたら、外部、たとえば経営者のサポートをしている機関、それを生業としている企業に相談するのも良いでしょう。
思い切って、誰かを頼ることで気持ちは軽くなるものです。
1人で考えて解決しようと、無理をしないでください。
③「うつ」かもしれない。その場合は、どうすれば良いのか?
セルフチェックで「うつ」の可能性が高いと感じたら、どうしたら良いのでしょうか。ここで、一番やってはいけないのが「放置」です。2週間の長きにわたって不調が続くのであれば、早めに手を打たなければいけないのですが、意外と心の不調は後回しにしてしまう人が多いのも事実です。
・「気の持ちようで何とかなるだろう!」と楽観的に考える。
・「自分は、これまでに幾度となくつらいときを経験してきた。今回も大丈夫だろう!」と過信する。
・「最近忙しかったから、心も疲弊しているのだろう。でも、きっと時間が経てば回復するから放っておこう」と、誤った見解で自分を納得させる。
このような考えは危険です。「うつ」の疑いがあるのであれば、早急に対処しなければいけません。
あなたを取り巻いている環境、状況に振り回されないようにする
まずは、すぐにできることから始めましょう。
「うつ」の原因の1つは「環境」です。
今、いる場所は精神的に苦しくなる環境なのに、そこから離れられないのであれば、ストレスが溜まるのは必然。思いきって環境を変えることができたら、どれほど気持ちが軽くなるでしょうか。
周りが「そこから離れた方が良い」「環境を変えれば良いのに」と言っても、「それができないから苦しいんだ!」と思う方もいるでしょう。会社のトップともなれば、簡単に環境を変えることはできません。
また、冒頭のコロナのように、突然環境が変わったことにより、それに対応できずに苦しくなってしまう……など、あなたを取り巻く環境が「うつ」の原因になっている可能性があります。
環境を変えることは容易ではありませんが、たとえば、「忙しくて休息の時間すらない」という人は、1日に数十分でも良いので、仕事に振り回されない時間を作ってみてください。
「周囲の人たちと、なぜかうまくコミュニケーションが取れない」という経営者は、「人間関係」に振り回されないように、少し「1人」の時間を作ってみてください。
どうしても、今の環境、状況を変えられないのなら、そこから心理的に、物理的に少しでも離れる時間を作ると良いでしょう。
仕事や人、時間などに振り回されない「ゆとり」のある時間を作ることで、気分の落ち込みを軽くしてあげることができます。
意識して「心が休める」時間を作ってみてください。
病院やカウンセリングルームに行って、今後の方針を立てる
先に述べたように、まずは自分でできることから取り組んでも、あまり心の状態が変わらず、「やはり『うつ』かもしれない」と思ったら、早めに病院やカウンセリングルームに足を運んでください。
たとえば、新商品の売り上げがなかなか伸びない状態が続いていれば、すぐに対処するはず。
・ニーズのある層とは別の層に向けて一生懸命売り込んでいたため、もう1度マーケティング調査を行う
・商品の打ち出し方、宣伝方法を変えてみる
このように、問題を引き起こしていると考えられる原因に対して、早急に手を打ちますよね。しかし、心の不調は数値化できないので、「まだ大丈夫だろう」と思い過ごしてしまいがち。
しかし、心の不調を甘く見てはいけません! 不調を放っておくと、ストレスが次から次へと積もっていき、取り返しのつかないことになってしまうからです。そのため、「最近、心身ともに不調だな」と感じたら、すぐに手を打たなければいけないのです。
自分の力、気持ちだけではどうしようもないと判断したら、ハードルが少し高いかもしれませんが、病院やカウンセリングルームに行きましょう。
しっかりと現状を改善し、その後、将来どのように会社を経営していきたいか? どんな経営者になりたいか? を考えていきましょう。
このとき、現状の改善のみならず、あなたが実現させたい未来を相談できる、また、それに対してアドバイスをくれるような病院、カウンセリングルームを選ぶと良いでしょう。
④経営者の気分の落ち込みは深刻な問題に繋がります
経営者という立場上、「環境を変えるために、長期の休みをいただきます」などということは容易ではない分、「自分がこの環境や状況を変えないといけない」と追い込まれてしまうこともあるでしょう。
誰にも相談できない。でも、今の状況を変えなければいけない。
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