売上があるのに赤字のクリニック|損益と資金繰りの確認手順

クリニック 経営 赤字 - 売上があるのに赤字のクリニック|経営構造を見直す方法

売上はあるのに赤字、通帳の残高も減っている。そのときは、売上を増やす施策に飛びつく前に、「損益の赤字」と「支払いに使える資金の不足」を分けてください。期限が迫る支払いがあるなら、資料が完全にそろうのを待たず、経理担当や顧問税理士、取引金融機関等に状況を共有します。

この記事では、赤字や資金不足を確認する順番を整理します。収益の基本構造と費用の考え方は、医院の収益構造の解説を参照してください。個別の借入・税務・人事の判断を確定するものではありません。

最初に、手元資金と期限がある支払いを確認する

月次試算表が黒字でも、入金待ち、借入元金の返済、設備代金などで資金が減ることがあります。資金繰り表には、日付、確定・見込みの区別、金額、担当者を記載します。未確定の入金を、確実に使える資金として扱わないでください。

確認すること資料の例整理する点
今使える資金預金残高、現金、利用上の制約等残高と自由に支払える額を区別する
近い入金診療報酬等の入金予定、未収金一覧日付と確度、未確認分を分ける
近い支払い給与、取引先、家賃、返済、税・保険料等期限、金額、確認・相談する相手を記録する

条件変更や新たな資金調達を検討する場合は、契約や返済への影響が伴います。記事だけで判断せず、関係する専門家や金融機関と個別に確認してください。

次に、前月・前年同月の損益との差を分解する

売上が減ったのか、材料・委託・人件費などが増えたのか、設備や一時的な費用が影響したのかを確認します。診療日数、拠点数、集計期間、会計処理が異なる数字を、そのまま比較しないでください。

病院と診療所、個人と法人では、収益や費用の構成、院長の報酬の扱いなどに違いがあります。「全国平均が何%だから自院も同じ」とはせず、比較資料の対象と利益の定義を確かめます。本記事では、すべての医院に共通する人件費率や利益率の目標は置きません。

損益分岐点は、前提付きの試算として使う

費用を固定費と変動費に分けると、簡易モデルで必要な売上を試算できます。J-Net21では、損益分岐点売上高を「固定費÷(1−変動費率)」として説明しています。実際の分類や計算範囲は、顧問税理士等と確認してください。

架空の一か月について、固定費600万円、変動費率30%と仮定すると、600÷0.7で約857.1万円です。医院の平均値や実績ではなく、計算方法を示す例です。税金、資金の入出金時期、設備投資、元金返済までまかなえる額を意味するものではありません。

売上が増えると人員や設備も必要になる場合は、固定費がそのままという仮定は成り立ちません。患者数を増やすだけで利益が出ると結論づけず、実施可能な体制と追加費用を確認します。

改善策は、安全・期限・実行できる範囲で選ぶ

費用の大きさだけを見て、人員を減らしたり必要な材料や保守を止めたりしないでください。診療の安全、法令、雇用や契約の条件を守れるかを確認したうえで、原因に対応する案を検討します。

見直す領域確認すること実行前の確認
請求・未収未処理や返戻等の状況、確認の担当適切な算定と記録、担当者の確認
材料・在庫使用量、期限切れ、発注単位、保管品質・安全と供給への影響
委託・契約実際の利用内容、更新・解約条件契約条件、切替え時の業務継続
勤務・役割作業量、勤務時間、業務の偏り必要な体制、労務条件、現場への影響

自由診療の導入や新しい制度の利用も、適用条件と提供体制の確認が先です。制度名だけを根拠に、赤字を解消できる施策として扱わないようにします。

実行計画には、誰がいつ何を確かめるかを残す

「収益改善」ではなく、「今月の在庫の差異を担当者が確認し、次の会議で発注方法の変更案を検討する」のように書きます。試算値と実績を分け、改善に必要な費用や現場の負担も確認してください。

毎月、損益だけでなく資金繰り、支払予定、実施した変更を並べます。赤字が一時的に解消した場合も、未払いが増えていないか、別の業務に負担が移っていないかを確認します。

よくある質問

院長報酬を下げればよいですか?

資金への影響だけでなく、税務、法人の手続き、生活への影響などを個別に確認する必要があります。売上の一定割合だけを基準に決めず、専門家と検討してください。

まず集患に予算を使うべきですか?

追加費用を負担できるか、受入れ体制があるか、売上増がどれだけ資金や利益に寄与するかを確認します。資金不足が迫っているときは、回収まで時間がかかる施策と、直近の支払いへの対応を分けてください。

今日の確認は、残高と次の支払期限から

次の支払い、その日までの入金、未確認の数字を一枚にまとめ、確認する相手を決めましょう。並行して、月次損益の差が大きい項目から一つずつ原因を確認します。

医療法人・クリニックの財務、役割、契約などを横断して整理したい方は、経営構造診断の案内をご確認ください。相談する課題や資料がまとまっていない場合も、お問い合わせから状況をお伝えいただけます。個別の税務・法律・医療の判断とは役割が異なります。

この記事で参照した公的情報

この記事を書いた人

ミレニアム株式会社 経営支援チーム

医療法人・クリニックを中心に、経営改善、組織設計、人材定着、財務改善、マーケティング支援を行う専門チームです。

院長・理事長への業務集中、スタッフ退職、採用難、評価制度の未整備、事業承継、集患・広報など、医療機関に特有の経営課題に対し、現場の実態と経営構造の両面から課題を整理し、改善策を提案しています。

本メディアの記事は、医療法人経営やクリニック運営に関する実務知見をもとに、経営者が意思決定しやすい情報提供を目的として監修しています。