クリニックの資金繰り表は、月初の現金預金に、その月の入金を足し、出金を引いて月末残高を見通す表です。売上や利益の表をコピーするのではなく、「実際にいつ入るか・支払うか」で記入します。借入金の元本返済や設備の支払いも含め、資金が不足しそうな時期を早めに確かめます。
作る前に、口座・期間・資料をそろえる
事業に使う現金と口座を一覧にし、同じ時点の残高を確認します。口座間の振替は、全口座を合算した表では入出金の両方から除き、収入や支出に二重計上しないようにします。使途が制限される資金があれば、自由に使える資金と区別して管理します。
資料は、預金明細、診療報酬等の入金予定、カード等の決済予定、給与・社会保険・税金の予定、請求書、借入返済表です。まず直近の実績一か月を作って照合し、その後に将来月を追加すると、項目の抜けを見つけやすくなります。
コピーして使う、月次の空欄ひな形
以下は自作の簡易ひな形です。表計算ソフトへ転記し、自院で必要な行を追加してください。融資提出用の指定書式ではありません。提出が目的なら、金融機関の指定と、ページ末尾の日本政策金融公庫の書式を確認します。
| 行 | 項目 | 対象月の実績/見込み |
|---|---|---|
| 1 | 月初の現金預金残高 | __円 |
| 2 | 入金:窓口・自費・診療報酬等 | __円 |
| 3 | 通常の出金:仕入・給与・家賃等 | __円 |
| 4 | 借入・出資等の資金調達 | __円 |
| 5 | 借入元本返済 | __円 |
| 6 | 設備・税金等(3行目と重複させない) | __円 |
| 7 | 月末残高=1+2-3+4-5-6 | __円 |
たとえば金額をB2~B7へ順に置くなら、月末残高のセルは「=B2+B3-B4+B5-B6-B7」です。翌月の月初残高は、前月の月末残高を参照させます。表の行を追加したときは、数式の参照先も確認してください。
診療した月と、入金される月を分ける
診療報酬は診療月の売上と入金月が異なるため、自院の実際の支払通知・振込実績に沿って入金予定を置きます。返戻・査定や入金調整、決済手数料なども、把握できる範囲で反映してください。一律の日程・金額で入ると決めつけず、確定と見込みを区別します。
窓口の現金売上、カード決済、未収金の回収も別に置くと確認しやすくなります。すでに入金予定へ入れた売上を、別の行でも加算しないよう注意します。利益と現金の違いは収益構造の基礎で整理できます。
仮定例:利益が出ていても、返済や設備で残高が減る
月初残高500万円、入金800万円、通常の出金650万円、資金調達0円、元本返済50万円、設備・税金等100万円と仮定します。月末残高は500+800-650-50-100=500万円です。通常の入出金では150万円増えても、それ以外の支払いで残高は増えていません。
これは実在する医院の数字ではありません。また、減価償却費は費用でもその月の現金支出ではなく、借入元本返済は現金支出でも通常の損益計算上の費用とは異なります。同じ金額を損益表からそのまま移すのではなく、支払いを確認します。
実績と見込みを分け、差額の理由を残す
将来月を作る際は、入金の根拠と支払期限を記録します。確定した請求書と概算の支出を同じ確度として扱わず、賞与・納税・保険料・年払い契約など、毎月ではない支払いも追加します。予定より収入が遅れた場合の残高も別に試算すると、不足時期を確認できます。
月が終わったら、月末残高を現金・預金の実残高と照合します。差が出たときは、口座の抜け、振替、カードの入金、未払・前払、借入返済の記入を確認してください。差額を説明せず「調整」で埋めると、翌月も同じ不明点が残ります。
不足が見えるときは、金額・期限・根拠をまとめる
支払遅延や新たな借入を自己判断で決める前に、いつ、いくら不足する見込みかを資料とともに整理し、税理士や金融機関等へ早めに相談します。支払順や調達の可否は、個別の事情と契約を踏まえる必要があります。
赤字への対応順は収益悪化時の確認手順、必要な売上の試算は損益分岐点の計算方法で確認できます。資料全体を整理する段階では経営診断の確認資料もご参照ください。
資金の見通しを、利益・人員・役割分担と合わせて整理したい方は、経営構造診断の内容・進め方をご覧ください。相談・見積を経て契約内容を確認する流れです。









